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​INTERVIEW

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2016年から「ななかずら 」としてブランドを立ち上げて活動されてきたとのことですが、創作に取り組むようになった経緯についてお話いただけますか?子どもの頃から物作りや表現活動に興味があったのですか?

もともとは母方の家族が東京の下町で紙の加工をする小さな町工場を営んでいたり、父の周りには織物や工芸を手掛けている人たちがいたりして、子どもの頃から展覧会を見に行ったりするのは身近なことでした。子供時代は周りの期待に応える、ように振る舞うタイプで、自己主張をしたり、自分を表現することは苦手だったですね。

2005年から13年まで転勤した夫に帯同して神戸で生活していたのですが、その時期に科目履修ができる大学や短大で色彩演習、西洋美術史、美学の講座を受講したり、陶芸やデッサンを習ったり、フランスに旅行して、モザイクタイルを教えてもらったりもしました。手順を守って学ばないといけないというそれまでの思い込みを外して、興味を持ったことを単発的に学ぶ動機を見つけて行きました。誰かからの指示に従うのではなく、自発的に行動したい、自分から発信して、アイデアを形にして何かを表現したいと模索するようになったんですよね。

当時はどのようなものを作っていたのですか?

たとえば、陶芸では持ち手のところが自転車になっているカップ&ソーサーのセットを作っています。それぞれに歪な形なんですが、役に立つとか、有用性を追求するということから離れてものを作るということをやってみたかったんです。

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その後、お子さんが生まれて現在7歳になられているということですが、彫金を始めて、本格的に活動を始めた時期と重なりますね。育児と制作活動を両立してこられたんですね。

 

子どもが2歳の時に「ななかずら」として活動を始めたのですが、その前から彫金を学んできました。家族や保育園など周囲からの手助けを得て、なんとか続けて来られたという感じですね。彫金は道具や制作環境を整えるのも、作業をするのも手間がかかるし根気を要するものなのですが、手間がかかること、片手間ではできないことに取り組むようになったからこそ、後に引けないし、本腰を入れようと思ったということもあります。

彫金を始めたのは30代半ばの時ですから、スタートとしては遅いのですが、育児に費やすエネルギーがある時だから勢いで続けられたということもあるかもしれません。

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なぜジュエリーを作ろうと考えたのですか。

 

身につけるもので、気軽に着脱が自在にできるものだからかな、と思いますね。身につければ体の輪郭と一体化するけど、外したら離れて眺める対象にすることもできますよね。ジュエリーのほかに、モビールのような作品も作っていて、それはジュエリーとインテリアの中間のようなものかもしれませんね。身につけることもできるし、空間装飾として距離をおいて眺めることもできるので。

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ジュエリーは、身体だけではなく空間にも影響を与えるのですね。

 

彫金という金属の特徴も関わっていますね。金属は光を反射しますから、身につけることで光の反射がその人のパーソナルスペースが広がる、ということがあると思うんです。モビールだと、光を反射して、影ができますから、空間の中に光の変化とか作用をもたらします。ジュエリーというと、宝石の稀少性とか財産としての価値の方が注目されがちですが、私が目指しているのはそういう「人に見られるための武装」としてのジュエリーではなくて、身につけることで、自分が安心できる場所が作れるようなものなんです。

素材としての彫金の魅力は何ですか?

 

素材として脆くない、強いということは大きな魅力ですね。紙や布のように糸で繋いだり、貼り合わせたりするものは、剥がれたりバラバラになったり、変質してしまったりしますが、金属はある程度の衝撃が加えられても形を保つことができますよね。

自分自身が年齢を重ねてきていて、女性であることや自分の身体をどのように受けとめていくのかということにも関わってくるのですが、ジュエリーが生きている存在としての強さにつながれば良いと思うんですよね。ジュエリーは必要のないもの、無駄なものだという見方もあると思うのですが、無駄なものをそぎ落としてミニマムであれば良いのか、というとそうでもない。余分なものを持つことで湧いてくるエネルギー、余裕を持つことで新しいものを生み出せるということもあると思うんです。ジュエリーを身につけることで、その視覚的な効果によって、人と接する上で距離を保てたり、相手に飲み込まれないようなパワーが得られる、ということもあると思うんですよね。

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創作活動を初めて、ものを作る人として自分の名刺を作って活動をするようになったことで、自分のことを表現したり、色々な人に会って、社会的なことに関心を持っている人たちの話を聞いたり、自分から話したりすることが増えていったと思います。それまでは、自分のことを表現することが不得手だから、どうせ私なんか、と卑下して、肯定できない気持ちが強かったんです。ジュエリーを身につけることで、自分がインパクトを周りに与えて、声をかけてもらえたり、振り向いてもらえるということは大事なんですよね。

「ななかずら 」はジュエリーを作る活動をする上での屋号、商標なのですが、自分の中では、「自分で作った、自分の名乗る苗字」のようなものだとも思っています。

コロナ禍で動乱の世の中ですから、個人で動けるようにするというのは大事なことですよね。

 

今は子供を育てている身でもありますが、子どもはいずれ大きくなって離れて行きますから、この先10年、20年後のことも考えて、今は種を蒔いて土台を作っている段階だと思います。これまでに習得して培ってきた彫金の表現を続けていくために、お客さんやいろいろな人の関係を編んでいるのだと思います。お客さんからの依頼を受けて、オーダーメイドのジュエリーやモビールの制作、ジュエリーのリメイクについて相談を受けたりもしているのですが、お客さんの気持ちや心に抱いている願いを想像しながら作っています。創作活動を模索しながら出会ってきた人とのの関係からもの作りを一つ一つ続けることで、これから自分の道を切り拓いていきたいと思っています。

ななかずら として活動をするようになって変わったことはどんなことですか?

 取材・構成:小林美香   https://note.com/mikamiki0223

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